軽トラ

Light-weight Truck

 

田舎暮らしでDIYな生活をするとなれば,軽トラが必需品となります。2X4材や薪の原木を運ぶのは,乗用車では困難です。また,軽トラなら白ナンバーの乗用車が入れない狭い林道でもどんどん入っていくことができます。

 

軽自動車は,利益率が少ないので製造から撤退するメーカーが続き,今やスズキ・ホンダ・ダイハツの3社が残るのみとなりました。他のメーカーは,この3社のどれかからOEMで提供を受けています。

 

OEMを受ける側は開発費用がかからず,一方提供する側はディーラーの展開に投資する費用を抑えることができる。そういう共生関係が成り立つようです。

 

軽トラの美点は小さいことであり,欠点も小さいこと。トラックなので荷台優先,1475Wx3395Lの軽自動車規格に1410Wx1940Lの荷台を載せると,必然的に人間の居住スペースが犠牲となります。この荷台サイズは,農業用の収穫物コンテナが隙間なく収まるように作られているそうです。これ以外のサイズの荷台を載せてもまったく売れないので,必然的にどのメーカーも申し合わせたようにこの規格に落ち着きました。

 

私は体が大きいので,居住スペースが狭いのはNGです。一度ホームセンターの貸出軽トラに乗って,足元が狭すぎてアクセル/ブレーキの踏み替えに往生し,せめて急ブレーキの踏めるスペースは欲しいと思っていました。そこで目をつけたのが,リアエンジンのスバルサンバー。これならエンジンがリアにあるのだから,フロントの足元は余裕があるはずです。

 

しかしもはやスバルは軽から撤退し,リアエンジンのサンバーは製造中止です。そこで中古車でリアエンジンサンバーを探したのですが,これがなかなか出てこない。 

 

ようやくネットで見つけたのが,2006年式のTT2型サンバートラック(4WD)。14年前のクルマです。乗用車だったら廃車になるところですが,軽トラを買う人は安くて動けばよいと考えるので,サビやキズ,年式は気にしないのでしょう。それに,農家では家と田畑の間を往復するだけなので,年式のわりに走行距離が少ない。そのことも低年式の中古車が市場に出てくる理由のようです。

 

リアエンジンのスバル自社製サンバートラックTT2型。フロントマスクの黒い部分は,ブラスチックの蓋にすぎないのだけど,なんとなく3代目レガシィを彷彿とさせる。

 

 

現物を見に塩尻まで行きました。ボディは多少サビがありくたびれていたが,下回りはあまり問題がなさそうで,エンジンは元気に回ります。32万円だと言うので,即決しました。契約書にサインしている間に別の購入希望者から問合せがあったが,「今売れました」ということで私のものに。中古車屋のオヤジさんが言うには,スバル製リアエンジンサンバーは人気があるとのことでした。

 

じつはサンバーは長い間赤帽サンバーとしても使われており,こちらは配送のプロユースであるため走行距離も大きく,ひじょうに過酷な使われ方をしてきました。そのため走行系が頑丈に作られているようで,これがサンバー人気となっているのでしょう。

 

TT2型は,最後のスバル自社製軽トラで,この後スバルは軽から撤退,現在のサンバートラックはダイハツのOEMです。スズキとダイハツはフロントエンジン,ホンダはミドシップなので,リアエンジンの軽トラを製造しているメーカーはなく,もはや新車では手に入りません。

 

 

リアに積まれたスバル製4気筒エンジン。よく回ります。

 

フレームは太くてガッチリしています。バッテリーむき出しなのが気になりますね。カバーくらいは付けて欲しい。

 

軽トラとしては広い運転席足元。しかも,フロントエンジンの場合はエンジンがシート下にあるので夏は熱いだろうが,これはリアエンジンなのでその心配はありません。ただし横風には弱く,強風の時はハンドルをとられます。高速道路は走る気がしません。パワステ・パワーウインドウ・集中ドアロック,すべて無しです。

 

2WD←→4WDの切替えはシフトレバー頭の押しボタンで行なう。

 

 

私のところに来たTT2は,見た目以上にボロくて,ガタピシ騒音と一緒に走るようなクルマでした。しかしエンジンは,トルクがフラットな上にスポーツカーみたいによく回り,組み合わされるマニュアルトランスミッションのギヤ比が絶妙で,さすがスバルという感じです。また,ほかの軽トラが3気筒エンジンであるのに対し,TT2は高回転の伸びが良い4気筒です。このへんにもメーカーのこだわりを感じます。