Kitchen
丸太小屋の間取を考えるとき,「キッチンを家の中心にしよう」と考えました。昔は「台所」というのは土間で,半分外のようなものだったのです。カマドに薪をくべて煮炊きしたのだから,畳や障子の日本家屋では火事の危険があり仕方なかったにせよ,床の間の部屋に比べたらずいぶんと虐げられていたと思います。そんな地位の低い場所ではなく,家族が食事と団欒を楽しむ場所,それが私の考える理想のキッチンです。
問題はキッチンユニット。新築住宅の設備でもっとも高価なものの一つです。ピンからキリまであるけど,安物は見るからに安っぽく,ちょっとイイナと思うものは200万円を超えたりします。
だから建築費全体を抑えるためには,これをいかに安くするかが重要です。いろいろ考えたあげく,私のイメージするカントリーテイストで仕上げるには自作しかないという結論に到りました。シンクや水栓,引出しは,DIYのための家具店IKEAのパーツを積極利用します。
試算してみたところ,構造を2x4材で組立てれば,IHとレンジフードまで含めて30~40万円で収まりそうです。システムキッチンには必ず戸棚がありますが,中に何をしまったか忘れてあちこち開けたり閉めたりが面倒なので,今後の認知症対策のためにも,棚はすべてオープンシステムとします。最近は「見せる収納」が流行っていることだし,工作も楽になる。
ログハウスにはIH調理器がベストです。ガスコンロの場合は,キッチンの壁を防火仕様にしなければならず,余計なお金と手間がかかる。IHなら火を使わないから,油汚れの対策だけ考えればいいわけですね。
キッチンユニットは2x4材で構造を組み,IKEAのワークトップを乗せることにしました。友田さんならアドリブで作るんでしょうが,私は大工シロートなので,綿密な設計図を描くことにしました。
これが平面・立面・側面・背面図です。この図面をもとに,アイソメトリック図を描いて,各部材の組み合わせに間違いがないようにします。
アイソメトリックで描いた構造図。2x4材で組んだ口の字型の脚を5枚短辺方向に並べ,長辺方向4本の2x4材で連結します。シンクの下はキャスタ付ダストボックスを収納予定なので,出し入れに邪魔にならぬよう長辺材はカットします。
三面図とアイソメ図をもとに,板取りを決めます。
ワークトップはIKEAのオーク集成材ですが,カットサービスがないので自分で穴開けをやらねばなりません。このワークトップは,28x650x2590 mm の大きさで,オークなので重さは45kgもあります。IHとシンクの穴を開けてようやく35kg,なんとか1人で持ち上げれる重さとなりました。
IHの穴はJISで規格が決まっていて,どんなメーカーの機種でも460x560 +5/-0
mmです。IHには幅600mmタイプと750mmとがありますが,本体のサイズは同じなので,穴の大きさも共通です。シンクは外周から10mm内側を切るという指定。定規をクランプで固定して丸ノコでくり抜きました。といっても一発勝負,失敗すれば高価なワークトップがおシャカになるので,緊張の作業でした。
シンクと水栓はIKEA,引出しにはIKEAのマキシメーラ,IHはネット通販で日立の3.2kW75cm幅です。オーブンは松江から持ってきたもの。マキシメーラの引出しレールにはダンパーが付いていて,開け閉めの感触に高級感があります。
IHは,ネットで探すと極端な安売りがあります。私の購入した製品は,定価46万円実売13万円でした。じつに7割引です。11万円というのもあったが,そちらは納期が不明なのでパス。それにしても何のための定価でしょうね。
キッチンの予想図。シンクの上に棚を吊すので,窓は横長の滑り出し窓にした。レンジフードの排気パイプは妻壁から出すので,ログウォールは無傷で済みます。
IKEAの引出しマキシメーラは,ダンパー付のレールと微調整のできる引出し前部金具,竹製の内部仕切など,システム化された優れものです。
ただ,寸法が公表されていないので,レール・引出しを買ってきてビス穴の位置を実測し,引出しを収めるキャビネットは店で展示品を実測して集成材で自作しました。店員さんが「自作ですか!」と驚いていましたよ。
引出し前部も,気に入ったデザインがなかったので,取り付け金具だけ利用して集成材で自作。この取り付け金具はダイキャスト製でがっちりしており,上下・左右・アオリの微調整ができます。
IKEAには通販システムがないので,東京の実家に間借りしているときに,立川IKEAにせっせと通ってパーツを購入し,できるところまであらかじめ作っておきました。引越荷物と一緒にこれらを安曇野へ送り,そこで組立てたわけです。
現場でフレームを組立てたところ。長尺の構造材は家の建材の余分を利用。2x4材は,曲がり・ねじれが大きく,この段階ですでに5mmくらいの誤差が生じています。
引出しボックスを組み込んだところ。引出しのボックスはフレームに乗せてビス3本で止めてあるだけです。こうすれば引出しはフレームから絶縁されるので,多少フレームが歪んでも引出しの開け閉めには影響しません。精度の低いシロート工作でも問題が起きないようにするための工夫です。
途中写真省略して完成図です。引出し把手はIKEA,ログウォールのフックレールもIKEA,包丁立てもIKEAです。シンクもIKEAで,白い陶器製にしようか最後まで迷ったところですが,陶器製のシンクは食器を落とすと割れる可能性が高いので,ステンレス製にしました。厚手のステンレスにインシュレーターが貼ってあるので,安物感はありません。シンク周囲はゴムシールで水漏れを防ぎ,裏からビスと金具で本体固定します。IHは日立製,重さ30kgあり上面が全面ガラスで割れやすいため,設置に2人は必要です。