ハンドカットログハウスのコスト
Cost of a hand-hewn log house
高いですね,はっきり言って。
まずはわが家にかかったお金から紹介しましょう。
建築費用(Building cost. Japanese yen)
「その他」は,建築確認申請・丸太運送・クレーンリース代・足場代などです。総額では,最初のドンブリ勘定2,000万円を大幅に超過し,約2,400万円となりました。
床面積が1F=77㎡, 2F=37.7㎡なので延べ床面積34.8坪,いわゆる坪単価は
2,400 / 34.8 = 69 万円
となります。
ちなみにこれは実費であり,もしハウスメーカーが介在すれば総額3,100~3,600万円になるだろうから,坪単価は90万円前後でしょう。実費だけで建てることができた理由は後述します。
内訳をもう少し細かく説明すると,「手間賃」というのは小屋組・土台・床張り・間仕切り壁などの作業に対する支払いです。「大工旅費」は,ビルダーさんたちが長野市とその近辺在住なので,安曇野に泊まってもらったときの宿泊料です。前半は民宿でしたが,後半は現場泊やキャンプなどでコストダウンに協力してくれたので,本来ならこの倍以上かかるはずです。2x材の出費が大きいのは,屋根の垂木に2x8を惜しみなく使ったためでしょう。屋根板金に150万円,これは面積が広いので仕方ない。整地に50万円かかったのは,現場のアカマツを皆伐し,地盤が扇状地礫ゆえ機械力を使っても掘り返すのが手間だったためです。基礎も通常より100万くらい多いですが,床下900mm欲しかったのでやむをえません。設備内訳は別表の通りで,ふつうの金額と思いますが,キッチンユニットを30万円で自作したことが設備費全体の費用を多少は抑えているはずです。
設備関係内訳
設備費内訳です。設備機器類のカタログ価格はあってなきがごとし,実売価格は定価の5.5~6割くらいです。業者さんへの報償金?もあるようで,だから業者は,施主がネットの安売りで入手した「施主支給」の機器提供をあまり喜びません。
キッチンユニット
Cost of DIY kitchen (Jpn yen)
自作キッチンユニットにかかった費用。日立のクッキングヒーターは,ネット通販で購入しましたが,定価46万円なので実に7割引です。IKEAの製品は値引なしですが,定価そのものがひじょうに安い。
さて。以上の金額が高いか安いか。
坪単価は材料や設備の選び方で大きく変わるのであまりアテにならないのですが,一般論として言えば,坪単価70万円は「高め」でしょう。
壁が全部無垢の丸太でそれを購入するのだから,まず材料費がかかります。その上に,現物合わせ・現場合わせのまさに手づくりの家です。
腕の良いビルダー5人が1ヶ月半べったりログサイトに張り付いてログを刻む。今日これほど贅沢な家造りがあろうか,と思います。高くて当たりまえ。工芸品のようなハンドクラフト文化であり,同じログハウスは二つとないのですからね。
かつては貧者の家だったログハウスも,現在の欧米では,むしろ生活にゆとりがあって自然を楽しみながら生活する人々のステータスシンボルとなりました。その傾向が北米の人々にとりわけ強いように思えるのは,彼らがもともとフロンティア精神に富み,自然に対して畏敬の念を抱いていることと無関係ではないような気がします。
でも,今日の日本では,1990年代に比べてハンドカットの注文は極端に減っています。高価だから当然と言えば当然ですが。したがってビルダー志望の若手が修業しようにも,もはやその場はほとんどないと言ってよいでしょう。
だから今現役のビルダーさんたちでハンドカットは終わりだと思います。彼らが(多くは40~60代)リタイアを迎えたとき,日本のハンドカットログ文化は消滅するわけね。建てるなら今のうちですよ。
その後どうしてもハンドカットが建てたいというときは,カナダやロシア,中国で刻んでもらってキットとして輸入するということになると思います(すでに大手のログメーカーではそうなっているそうですが)
(https://ameblo.jp/ochisaikk/entry-12302002022.html?frm=theme)。