土地探し

 

まずは土地探しです。

 

上京のついでに女房を連れて安曇野の土地を見に行きました。

 

じつは,前年の11月,奥飛騨温泉で行なわれた大学同窓会の折に一度下見に来ています。そのとき坪3万円で200坪の土地が,半年後の今回は坪2万になっていました。場所は別荘地事務所のすぐ近くで,したがって日常生活には一番条件の良い土地。ほとんど即決で決めてしまった。

 

©2018 Google, Data Japan Hydrographic Association, Landsat / Copernicus, Data SIO, NOAA, U.S. Navy, NGA, GEBCO
©2018 Google, Data Japan Hydrographic Association, Landsat / Copernicus, Data SIO, NOAA, U.S. Navy, NGA, GEBCO

Google Map 3Dで観た安曇野と北アルプス。拙宅は,中房川扇状地の真ん中です。安曇野全体の複合扇状地は,パッチワーク状のタンボと畑がほとんどで,森がありません。拙宅の周囲を含めて扇状地上にわずかに残された森(というより疎林)は,主に別荘地です。55年前に,山麓保養地として当時の穂高町が持続可能な抑制された開発を計画し,東京の歯科開業医が土地を購入して別荘地分譲[5]を行ないました。それが今に続いているわけです。これらの疎林は,アカマツ・カラマツ・クヌギなどの二次林です。北アルプスのこちら側は相当山奥まで人の手が入っており,極相の原生林を見るためには有明山より奥に行かねばなりません。日本列島をブッタ切る大断層の糸魚川-静岡構造線は,安曇野複合扇状地と北アルプスの境目ではなく,もっと東よりの犀川丘陵縁を通っています。この構造線が東北日本と西南日本の境界だとする俗説は間違いですね。西南日本の地質は,この構造線を超えて関東地方まで続いています。


 

 

ちなみにここの別荘分譲地は完売しており,以前買った人が諸事情により手放したいというときだけ事務所が仲介するということでした。平均すると坪3~4万円といったところです。だから坪2万は格安。

 

ほかに坪1万円で300坪という土地も売り出されていたが,穂高駅から1時間半くらいは歩かねばならず,いずれ運転免許返上となるであろうことを考えると,選択肢から外れます。

 

安曇野は,北アルプスの山麓に発達する複合扇状地なのだけど,目をつけた土地はその一つの扇状地の扇央部で,地面の下にはコブシ大~ラグビーボールくらいの礫がゴロゴロしています。礫は,ほとんどが燕岳から供給された白亜紀~古第三紀花崗岩です。

 

文献[7]によればここの地下水面は地表下10mなので,井戸水を得ようと思ったら10m掘らなければなりません。一方,扇状地末端にいくと水が湧いており(つまり地下水位=地表面),その湧水を利用して穂高のワサビ田が開発されています。

 

北アルプスの山麓や高瀬川沿いには活断層が推定されていますが,私は,地質学徒でありながら活断層なるものをあまり信用していないので,無視することにしました。

 


台形の威圧的な山が安曇野のシンボル有明山。その左の谷が中房川で,奥にそびえるのが大天井岳(おてんしょうだけ)。



雪の大天井岳。これを見るだけでも安曇野に住む価値がありますね。手前のアカマツ林は別荘地です。扇状地扇央部なので水はけが良すぎて水田になりません。そのため果樹園にするか,クヌギ林にして天蚕を飼うしかなかったようです。手前は扇端部なので,客土でかろうじて水田ができたらしい。



別荘地の中を堤防もコンクリート貼りもない自然河川が流れています。人口河道を見慣れた目には新鮮に映ります。この川は,下流に行くにつれて水量が減り,しまいには水田の用水路に消えてしまいます。扇状地の上にはこうした河川が網状の流路を作っているのです。


そもそも安曇野に住みたいと思ったのは,院生の頃に学会でこの地を訪れ,北アルプスの麓に広がる高原に憧れたからでした。

 

その後,勤めの関係で松江の低地に37年間暮らしたが,あの高湿度の気候にはどうしてもなじめなかった。体質に合わない,ということでしょうね。ただし女性の肌にはあの高湿度が良いそうで,島根は美肌県トップクラスです。肌荒れに悩まされている女性は,島根県に移住するといいですよ。

 

ちなみに,購入予定地の標高は590m。東京ゼロメートル地に建っている高さ634mのスカイツリーのほぼてっぺんです。

 

こうしてみると,安曇野はずいぶんと高いところにあるのがわかります
こうしてみると,安曇野はずいぶんと高いところにあるのがわかります

 

女房は,埼玉出身ですが37年間のうちにすっかり松江のnative同様になっていたので,移住には消極的でした。それで,あるていど目星がついてから(要するに既成事実を積み重ねてから),季節の良いときに安曇野に連れていきました。アートロードと呼ばれるほど美術館やおしゃれな店が周囲に多くみられ,気に入ってくれたようです。