ビルダー探し(1)
土地は決まりました。
次は家です。40代のころは,かなり本気で丸太小屋をセルフビルドするつもりでいました。セルフビルドというのは,大工さんに頼まず,自分で丸太を積み上げて家を建てることです。
本来,丸太小屋(ログハウス)というのは,「大草原の小さな家」に描かれているように,開拓農民が建築場所の木を伐採し横に積み上げて建てたもの。横に積んでいくだけなので柱がなくて,柱と梁の木組みに関する難しい技能は不要です。つまり早く言えば,大工ではなくシロウトが材料を現地調達して建てる家です。
材料費タダ,労働力は自分と家族なのでこれもタダ,つまりは無料で建てる究極のエコ住宅でした。
開拓時代以後,より丈夫でかつ快適な住環境にするための工夫が積み重ねられて(組み合わせ部がずれないノッチの工法とか,隙間風をなくすため丸太の密着性を上げる工夫とか),今日の丸太小屋のスタイルが完成したわけです。
富良野にある「北の国から」の黒板五郎の丸太小屋は,タイコ挽き丸太をラウンドノッチで積んでいます。丸太同士の隙間には生きている苔を詰めていました。「苔が成長して隙間を塞ぐ」と言ってましたね。しかし苔は湿気を帯びるからなぁ。丸太が腐りやすくなると思うけどな。
40代の全盛期ならともかく,定年退職となった今は体力的にセルフビルドは無理なので,腕の良いビルダーを現地長野県で見つけなければなりません。
ビルダーに関する知識は全然なかったので,Webや雑誌「ログハウスマガジン」で調べました。その結果,40代に講読した古い雑誌に載っているビルダーは,大半が「消えて」いることが判明。う~む,結構生き残りのキビシイ業界らしい…
森から切り出した丸太を現場で一本一本寸法測りながら刻んで積む工法は,量産の不可能な手仕事にほかなりません。だから本来は超マイナーな業種で,大量生産や大規模経営に向かず,数人規模の零細企業が多いようです。そうした小さな工務店は,ログハウスブームの衰退とともに,潮が引くように消えていったのでしょう。
工場でログを機械加工し量産化に向くようにした工法の家は,マシンカットログハウスと呼ばれています。それに対して現場の手仕事で丸太を刻むのがハンドカットログハウス。
日本ログハウス協会という業界団体の集計[6]では,マシンカットはそれなりの建築数がありますが,ハンドカットログハウスは,全国で年間わずか10棟程度しか建てられていません。ほとんど絶滅危惧種ですね。
ハンドカットログハウスでも加工はカナダなどに外注し,その加工済み丸太を輸入して組立だけ行なうというメーカーもあるようです。日本の現状では若いログビルダーは育たないでしょうから,今後はハンドカットすなわち外注加工となっていくのでしょう。
なお,ポスト&ビーム構法といって,柱や梁に太い丸太を使って建てる家も「ログハウス」と呼ばれることがありますが,構造としては在来の軸組構法です。だから,ほぞを組む大工さんの技能が必要。本来ログハウスというのは,丸太を横積みにした「丸太組構法」の家のことです。