施主参加

 

私は定年退職者なので暇人であり,しょっちゅう現場に出向いてシロウトでもできる作業をしていました。これがハウスメーカーの場合には,メーカーにとってあまりありがたくない施主になると思います。

 

ハウスメーカーや大きな工務店で家を建てる場合,意思決定権は施主にも現場の棟梁にもなくて,メーカーの責任者(役職名を何というのか知りませんが)にあるわけです。

 

たとえば施主が現場で建築中の「我が家」を見て,「あそこをちょっと変更したい」と思ったとしましょう。で,そこにいる大工さんをつかまえて,「あそこを変えてくれ」と言っても,すぐには通りません。なぜなら大工さんは,施主に雇われているのではなくて,元請けメーカーと契約して仕事をしているのだから,元請けメーカーに言われないかぎり変更はできないわけです。

 

施主の要望は,いったんメーカー責任者のところまで上がって(場合によっては設計士のところまで遡って),そこから大工に「変更指示」が降りてくる。時間がかかるし,メーカーにとっては,現場に顔を出して現場を「かき回す」施主は,ある意味迷惑でしょう。設計変更は,それだけで予算超過になります。

 

それに,万一現場で施主にケガでもされたら,工事に関しては部外者の施主には労災保険もなく,部外者を工事現場に入れたハウスメーカーが刑事・民事の全責任を被るわけです。そんなリスクをメーカーが冒すはずはありません。施主参加を謳うメーカーもありますが,せいぜい壁の塗装くらいがいいところで,チェンソーなど持たせないのがふつうでしょう。

 

しかし直営方式の場合は,施主すなわち元請であり,施主とビルダーが直接の契約関係にあるので,現場で意思決定が即座にできます。指揮系統を乱すこともありません。ケガは施主の自己責任。

 

そもそもハンドカットログハウスは現物合わせが多く,たとえば窓枠の位置にしても丸太の太さに合わせて決めるので,設計図通りにはいかない。2F床の高さも,ログ壁が積み上がるまでは決まりません。だから,つねに施主の意思確認が必要になり,むしろ施主が現場にウロウロしていてくれた方が,ビルダーとしてはやりやすいわけです。