Direct Management

直営方式または分離発注方式

 

契約にあたって友田さんから提案されたのは,直営方式とか分離発注方式と呼ばれるやり方。

 

工務店やハウスメーカーに注文住宅を発注する場合は,元請代理店に丸投げする一括請負方式と呼ばれる方法で,ふつうはこれで家を建てます。

 

一括請負方式。赤矢印はお金の流れ。施主は,工務店やハウスメーカー支店と契約・発注します。ローンを組む場合は,銀行とも契約することになります。銀行は,施主の収入や債務などで問題がないか,意地悪な審査をします。その上で完成した家を担保にお金を貸す。家が完成すると,施主と工務店は工事完了引渡契約を交わして(紙一枚ですが),家は晴れて施主の所有物となります。それまでの建築中の家は工務店の所有であり,施主のものではありません。大きな工務店は社員の大工さんを雇用しているところもありますが,社長一人が大工という零細な会社も珍しくない。そういうところは,フリーの大工と単発の契約を結びます。基礎屋さん,屋根屋さんなども独立した工務店なので,それぞれが元請工務店と契約します。

 

 

一括請負方式はまったくの世話なしで,極端に言えば施主は一度も現場に顔を出さなくてもOK。下請け工務店のことも知らない。メーカー営業マンとの打合せだけで工事は進みます。家を建てるには十人以上の職人さんが働くにもかかわらず,施主と打ち合わせるのは営業マンと施工担当の現場監督だけ。

 

よく考えるとすごくヘンなのですが,ハウスメーカーではこれがふつうで,松江で家を建てたときがこの方式でした。

 

世話なしなんだけど,家の中のどこを給排水管やガス管,電気配線が通っているのか,施主には全然わかりません。つまり自分の家のことを知らずに住んでいて,築十数年後に水漏れがあったとき初めて慌てることになる。天井裏を覗いて,そこに配管資材のゴミが放置してあるのを発見し,愕然とする。植木を植えようとして庭を掘ると,ガレキや廃材が埋まっている…

 

なによりも,ハウスメーカーが会社を経営するための経費(営業費・人件費・宣伝費・事務所費・保険料・営業利益など)が受注費に含まれているから,そのぶんが加算されています。それがまあ,「世話なし」の代価ということですが。

大手ハウスメーカーなどでは工事費の30~50%が会社の取り分であるという指摘がネットにありました。工事費が2000万円の家をハウスメーカーで建てれば,2600~3000万円になるということです。施主にはわかりませんが,会社を維持するとなればそのくらい取らなければやっていけないのでしょう。

一括請負方式では費用は,ハウスメーカーに一括して支払います。ふつうはローンを組むので,銀行が工事進行に合わせて1/3ずつ分割して支払うようですが,施主は銀行とローン契約を結ぶだけなので,支払時期までは気にしません。

ここでもし建築途中にハウスメーカーが倒産したりすると(じつはそんなに希有なことではないのだが),家は建たず,施主にはローンの負担だけが残るという最悪事態になります。

 

メーカーで建築中の家はメーカーの資産であり,まだ施主の所有ではないため,メーカー倒産のときには裁判所に差し押さえられてしまいます。施主は債権者の一人にすぎないので,管財人の債務整理が終わるまでは手が出せず,工事を引き継いでくれる業者を探すこともできません。

そんな馬鹿な,と常識的には思うけど,私が松江で家を建てたバブル崩壊の頃は住宅メーカー倒産がしばしば起こり,知人がそういう理不尽な目にあうのを現実に見てきました。

これに対して,直営方式というのは,元請けがいないというか,施主が元請けのような建て方。

 

直営方式または分離発注方式などと呼ばれる方式。上記一括請負方式の元請のところに施主が入っていることからわかるように,元請-下請の業者関係はなく,すべてが施主と各専門業者との1:1取り引きとなります。直営方式では,元請業者だけでなく銀行も抜けています。

 

 

経費は,大工・基礎屋・設備屋・屋根屋などに施主がその都度直接支払います。その都度お金を払うので,所有権は最初から施主にあり,不測の事態が起こっても,損害はその部分だけで済む。リスク分散になります。

ただし施主は建築のシロウトなので,全体を監理する人は必要です。これをやってくれるのが大工の棟梁ですね。昔は,家はこうして建てていたのです。個人事業主が集まって家を建てるので,倒産のリスクは分散され,おそらく最悪の事態は施主が突然死することくらいでしょうか。

わが家の場合,棟梁である友田さんに直接支払ったのは,丸太の代金とチーム友田が行なう丸太加工の手間賃だけです。友田さんは業者の紹介者であり,お金の流れだけみれば,すべて個別の業務発注になっています。

完成住宅の契約ではないので,住宅ローンは組めません。銀行は,元請けがいなければ一軒の住宅建築とは認めないでしょう。完成住宅としての資産価値(担保価値)がない物件にお金を貸すようなリスクを,銀行は冒さない。

この方式のデメリットは,自己資金がないと難しいことと,施主と棟梁の間に信頼関係がないとうまくいかないことでしょう。先にリスク分散と書きましたが,これは同時に責任分散でもあります。家の完成に最終責任を負うのはほかならぬ施主であり,棟梁は助言者としてサポートするにすぎない。一括請負方式では元請業者が家の完成に責任を負いますが,直営方式はそうではない。そこを間違えるとまずいことになります。

なお,一括請負方式で建てた場合のメーカー倒産による悲劇を回避するため,今は完成保証制度があります。保険の一種で,メーカーが倒産しても保証協会が他の業者を紹介してくれるなど,施主を保護する制度です。

直営方式では家は建築中から施主のものなので,メーカー倒産のリスクはないが,ログ加工中に火事や水害など不測の事故に遭う可能性はゼロではない。そこで拙宅の場合,友田さんに損害賠償保険に入ってもらうことにしました。施主から預かっている丸太を損傷した場合の賠償保険で,3ヶ月の掛金7500円は私が負担しました。