Notch and groove

ノッチとグルーブ:丸太小屋の強度と気密性

 

丸太をどうやって積んだのかを以下に説明していきますが,その前に丸太組構法の基本であるノッチとグルーブについて簡単に説明しましょう。

 

「大草原の小さな家」[8]の丸太小屋は,隙間だらけです。昔ならともかく,現代では隙間だらけの家は使いものになりません。夏は虫が入り,冬は隙間風が寒くて寝てられない。そこで,隙間なく丸太を積むために,これまでさまざまな工夫がなされてきました。

 

丸太をキャンプファイアの薪のように井桁に組上げると,「壁」には丸太一本分の隙間が丸太と交互に空くことになります。これでは壁にならないだけでなく,直交する丸太同士噛み合っていないので強度はゼロ,押しただけで崩れてしまいます。

 


Simply piling up logs. Too many gaps.

この図は井桁組を真横から見たもの。隙間だらけです。

 

Butt and pass structure. One log end passes through the cross logs, while the counter end butts to the cross log. Gaps are closed.

そこで,井桁ではなく少しずらせて,ログエンドの片方を交差するログのところで止めると,この図のようになります。

 

Plan view.

一段を上から見るとこんな感じ。

 

 

これで隙間をふさぐことはできました。ログ同士噛み合っていないので剛性はありませんが,ともかく壁はできた。butt and pass構法と呼ばれています。ログエンドが交互にbutt(突き当て)またはpass(貫通)する方法で,強度を上げるためbuttの側にホゾ加工をしますが,抜けてしまう可能性があるので耐震性は低いと思われます。

 

butt and pass構法の実例。これはタイコ挽き丸太を使っています。

 

 

剛性を高めるためにログの交差部を蟻組みにして,残った隙間には漆喰などを詰める構法はdovetail(鳩尾)notchと呼ばれています。直交するログ同士が組み合うので,強度は飛躍的に高まる。

 

Dovetail notch.

ダブテイル ノッチ(dovetail notch)。ドーブテイルじゃありませんよ。ログエンドが逆テーパーになった鳩尾状の蟻組みなので,この呼び名があります。拙宅のすぐ近所にある「ティータイム ガルニ」という喫茶店が,この形状の角ログハウスです。テラスでコーヒーが飲める美しいログの喫茶です。

 

Dovetail notches and chinking by plaster. Coffee shop near my house.

ティータイム ガルニの外観。角ログをダブテイルノッチで組んでいます。表面は電動カンナ痕をわざと残し,チョウナ加工のようにみせています。漆喰のチンキングがストライプ状のアクセントで美しい。

 

Dovetail notches