窓:ヘッダーと窓台

Window — header and sill logs

 

丸太小屋の窓取付けは特殊です。

丸太壁は,生木の丸太を積み上げるので,乾燥によって丸太が収縮し,壁全体が沈下します。これをセトリングといって,その量はおよそ1/16(6%)とされており[11],高さ2800mmの壁なら170mmも沈むことになります。したがって最初から窓枠を壁に固定すると窓が壊れてしまう。

 

だから丸太小屋の窓・ドア類は,丸太壁にはめ込んであるだけです。その方法は:

 

こんな具合に壁に溝を切って2x4材(キーボード)を差し込み,それに2x6材などで作った窓枠を固定します。キーボードは差し込んであるだけなので,窓枠はセトリングの影響を受けません。

 

窓を通る平面図です。2x4材のキーボードが丸太壁の溝(キーウェイ)にはめ込まれ,窓枠はこのキーボードに取付けます。こうすることで窓枠と丸太壁は絶縁されるわけです。キーウェイの隙間にはグラスウールを詰めて隙間風を防ぐ。窓枠と丸太壁の隙間を隠すため,1x4材などのトリムボードを壁側だけにビス止めします。

 

次に,窓枠上下の位置について。窓枠上端または下端が丸太の重なる部分に一致することは,窓枠が固定できなくなるので避けねばなりません。できれば丸太の一番太い部分で支えることが望ましい。そこで,丸太の太さを考慮しながら窓枠位置を決めることになります。設計図通りにはいきません。

窓枠下端の高さを「大体このあたり」としておき,丸太壁が積み上がってから窓開口部上端(header)を加工します。しかるのち,窓枠+セトリングスペースの開口高さで下側の丸太(窓台:window sill log)をカットする。このとき,ヘッダーの方は丸太を地面に降ろしてひっくり返してから加工し,窓台丸太の方は(もはや降ろせないので)そのままの位置でカットします。

 

ヘッダーを地面に降ろして加工しているところ。ここに雨がかかることはまずないが,外側は水勾配をつけています。もし丸太壁にヘッダーを載せた状態で加工するとなると,仰向けの作業になり,キツいうえに危険です。

 

こちらは加工済み窓台です。下向きに傾斜する水勾配が一応ついていますが,途方もない暴風雨でなければここに雨が吹きつけることはありません。

 

2x6材の窓枠とサッシが入ったところ。窓枠上部にセトリングスペースが開いていて,外の足場が見えます。ここはグラスウールを詰めてトリムボードで隠すだけ。丸太小屋の窓・ドア・間仕切り壁上部には,こういう隙間が必ずあります。